深呼吸する言葉・浅田一憲

「深呼吸する言葉」橘川幸夫さんの主催する「深呼吸する言葉」の作法に則って、毎日一本100文字以内で書く詩(歌)です。

2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

深呼吸する言葉・煙

男はいつも母っ子だ。酔った父が語るは何十年も前の日のこと。 「火葬場の煙突から上る煙を見たときに、なんてことをしたんだ、今すぐ空に駆け上り、かあちゃんの塵と煙を残らず掻き集めなきゃと思ったよ。」

深呼吸する言葉・アスパラ食え

そんなにしょげるな。 ほら、アスパラ食え。採れたては栄養満点。病気だって治っちゃうかもよ。 お前が悪いんじゃない。お前の運が悪かったわけでもない。誰も悪くない。何も悪くない。

深呼吸する言葉・運動会

よーいどんでスタート、スパートして、ゴーール! 頑張ったね。よく最後まで走りきったね。 学校では何着でも、ママにとってはピカピカの金メダル。 ママも頑張って今日はご馳走!

深呼吸する言葉・19歳の挫折

毎日喫茶店を転々とし、大通公園のベンチでボケっと過ごした。 世間に見捨てられた気がして、何もする気がせず、覚えたての煙草を吸いながら震えてた。 受験に失敗した19歳、僕が僕になりかけた頃。

深呼吸する言葉・光

光量が不足すると、人間の眼は色を識別しにくくなる。 暗いところに入り込むと物事の本質がよく見えなくなってしまうから、あなたはいつも努めて明るく振る舞うようにしなさい。大切な人たちのために。

深呼吸する言葉・俺の背中

どうして何も相談してくれなかったんですか、そんなに私たちは頼りになりませんか、と君らは言うが、そう思っているわけじゃない。 これは俺が背負うべき仕事だ。俺だけが決め俺だけが責任を取る。ただそれだけだ。

深呼吸する言葉・お腹の隙間・心の隙間

怒っていたのに、相手がしょんぼりしているのを見ると、優しい言葉をかけたくなるのさ。 じゃあ、いったいあの怒りは何だったの? きっと、お腹がすいて機嫌が悪いみたいなものだったんだろうね。

深呼吸する言葉・人だけを見て

自分の都合や相手の状況に構うことなく、純粋にその人だけを見て人を好きになれるようでありたい。 そして、どれだけ多くの好きな人がいるかによって、その時々の私の度量の大きさを量ろう。

深呼吸する言葉・旬

季節には旬のものを食べる。 それが一番美味しいし、栄養もあって、自然にもいい。

深呼吸する言葉・山菜

山の恵みをいただきます。 タケノコ、タラの芽、独活、蕗、蕨。 春の香りのお裾分け。 欲は出しますな。採り過ぎませぬよう。

深呼吸する言葉・木の気持ち

梅も桜も、花だけのときが一番美しくて、葉が出ると皆がっかりするのだけれど、枝いっぱいに葉を繁らせることが木にとって一番大切なのだから、葉が出たら喜んであげてくださいな。

深呼吸する言葉・ギアが入る

新しいことを始めるときは、何から手をつけていいかわからないし、いざ始めてもさっぱり進まず気が焦るものだが、その時期さえ乗り越えれば、ある日突然ギアが入ったようにびゅんびゅんと進むようになる。

深呼吸する言葉・心配の心配

どんなに馬鹿なことをしてひどい目に合っても自分のせいなのだから、当人には覚悟してやってもらえばいいけど、それを見ているあの人が心配していることが、僕には辛いんだ。

深呼吸する言葉・自分を蝕む

期せずして人を傷つけてしまっても、傷つけようとして人を傷つけても、傷つけたことには変わりはしない。 ただ、敢えて人を傷つける人はそれによって自分の心が蝕まれていく。

深呼吸する言葉・花はどこへ行った

今年も春がやって来て、たくさんの花が一斉に咲き出した。 花はどこへ行った、少女が摘んだ。そんな悲しい歌はもう歌わせない。 今年も花が咲いた。たくさん花が咲いた。

深呼吸する言葉・春

半年雪に閉ざされているからこそ、春一斉に花が咲く中のBBQは本当に楽しい。

深呼吸する言葉・僕としての価値

明るく振舞っている人ほど苦労している。 それを誰も気付いていないときに、一人だけ気付いている人間じゃないと僕としての価値がない。

深呼吸する言葉・寒春(短歌)

寒過ぎてまとう霞は凍らぬか佐保姫風邪を召されませぬよう

深呼吸する言葉・酒

辛い気持ちを麻痺させたいからやけ酒を飲み、嬉しい気持ちを増幅させたいから祝杯を上げる。 すなわち、酒は、2つの真逆な性質を持つ魔法の薬である。

深呼吸する言葉・男の愚かさ

粋だけどおそらく想いは伝わらないだろうやり方と、無粋だけどはっきり想いが伝わるやり方の、どちらを選ぶかは、男の生き方の根本に関わる問題なのだ。

深呼吸する言葉・蔑すんだ哀れみ

昔、今よりもっと口が悪かった頃、そんな人だったなんて残念だとか、そういう考えしかできなくてかわいそうだなどと口にしたものだ。 今はとても言えない。残念とかわいそうは最も失礼な言葉だと気付いたから。

深呼吸する言葉・察する力

他の人の気持ちを察するためには、自分をその人の立場に置き換えた上で、見聞きしたであろうことを受け止め、ニュアンスを感じ取り、心の動きを推し量るという、とてつもなく大きな想像力が必要だ。

深呼吸する言葉・母

子は親離れし、親は子離れし、やがて離れて行くにしても、永遠に近くにある。 だって、自らの一部は確実に互いによって作られていて、折々に私はあなたなのだから。

深呼吸する言葉・カリスマ

類い稀なるカリスマだからこそ、画期的な製品を世に送り出すことができるわけだが、そのような人の会社は、いつも情報が錯綜し、方針や対応が変化するので、安心して付き合うことができない。

深呼吸する言葉・メンテナンス

家も車もパソコンも、古くなるといろいろなところが壊れてくる。 でも、全部がおかしくなることはなく、一部の弱い箇所がダメになるだけだ。 メンテナンスすれば、まだまだ快適に使うことができる。 私だって。

深呼吸する言葉・目利き

有名人など追っかけたくないし、ブランドなんてちっともありがたくないのさ。肩書きに価値など感じない。 俺は人も物も自分で選べる。

深呼吸する言葉・野鳩

野鳩よ、半年間餌を撒かなかったのに、春になってまたやって来た。 我家を覚えていてくれてありがとう。 たくさん食べて、いい卵を生んで、毎年ずっとうちに来い。

深呼吸する言葉・淋しい

あの人に、想いを告げられなくて淋しい。 あの人と、一緒にいられないから淋しい。 あの人が、悩み苦しんでいるから淋しい。 あの人も、淋しく感じているから淋しい。

深呼吸する言葉・庭

どんなに大切に育てても、冬の間に木の枝の何本かは死んでしまう。 春になってしばらく経って、新緑が芽吹く季節になってようやくそれがわかる。 何事も安心するのは、しばらく様子を見極めてからだ。

深呼吸する言葉・環境と子孫

水持ちがする土地の葡萄は、木は大きくなっても良い果実は実らない。 水はけの良い土地の葡萄は、木は大きくならないが良い果実が実る。 ひもじいとき、自分は食べずに子供に食べさせるのはどの親も同じだ。